「じこはおこるさ」という歌があります。きかんしゃトーマスで使用されている歌です。歌詞には次のフレーズがあります。
「忘れてると事故は起こるさ」
まさに忘れたころに事故(労働災害)を起こしてしまいました。またやってしまった。これで通算何度目の労働災害だろうか…いい加減、会社幹部から目をつけられています。
そこで反省の意味も込めて、労働災害が起こる要因を考えてみました。労災だけでなく、製造業において不良品を発生させる要因にもなると思います。
危険作業を行っている方は必ず心得ておくべきことだと考えています。
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安全、品質、生産性
先に製造業における心構えについて綴ります。製造現場において重要な心構えと優先順位は次のようになります。製造業に携わっている方なら分かる考え方だと思います。
- 安全(作業者、作業環境の安全確保)
- 品質(製品の品質)
- 生産性(コスト、納期)
この順位にある通り、何よりも「安全」が最重要視されます。安全な環境が確保されなければ、作業者は生産に専念することが出来ません。品質、生産性の向上には安全があってこそのもの。一つずつ考えてみましょう。
安全(作業者、作業環境の安全確保)
安全とは作業者がケガをしない環境、作業方法を確保することです。ある作業に関して不安全ヶ所があれば一つずつ潰していき、作業環境を改善していくことが求められます。
これは企業のトップが音頭を取って行うことも重要ですが、それだけでは足りません。今ある現場のことを一番知っているのは、その現場作業員です。作業員一人一人が安全確保に取り組む必要があります。
作業者自身の安全意識の向上のために、「KY(危険予知)活動」、「指さし確認」、「ヒヤリハット活動」等を行うことがありますね。
安全確保には社員全員が事故を発生させないという共通意識のもとで行わなければなりません。それぞれが安全確保のために現場改善に努めてこそ、安全な作業環境が生まれます。
さらに、安全確保のために5Sと呼ばれる活動があります。「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」の頭文字をとって5Sです。こちらはまた機会があれば発信するとします。
ところで私の会社では定期的に「社長巡視」というものが行われます。今ある現場のことは、現場の作業員が一番理解している。それでも普段現場にいない人物からすれば今の状況をどう捉えるか視察し、不安全ヶ所がないかチェックします。主に社長以下経営幹部が視察します。(これがなかなか手厳しい…)
品質(製品の品質)
安全が確保されたら、次に製品の品質を求めます。
いくら製品を作ったとしても、それが不良品であれば誰も使いません。その製品の欠陥によって他人に傷害などを与えたとあれば、生産物賠償責任にも問われます。
製品を世の中に出す以上は、その製品に責任を持たなければなりません。
顧客が求めている品質を満たした製品を納品することで、信頼できる製品が生まれます。それが顧客から信頼できる会社となります。ひいては、その会社において信頼される人物へとつながります。
ただ安全確保と違い、品質確保は容易ではありません。完全機械作業であれば、ムラなく一定の品質が確保されるでしょう。では機械が出来ず、人が行う作業についてはどうでしょうか。
作業者一人一人、技量が異なります。熟練した作業員であれば、品質も確保されます。しかし、まだ経験の浅い人物では品質にバラツキがあり、不良品を発生させることも多々あります。(その時は不良品を社外流出させない工夫が必要です。)
そういう人物を指導し、誰が作業しても求められている品質を確保するかが製造現場の肝となります。
私の会社では比較的受注が少なくなる2月~5月にかけて、各作業員の集中指導を行います。余裕のある時期に少しずつ人を異動させ、普段と違う作業を行わせます。熟練した作業員が指導することで、多能工化を進めています。
また、過去発生した不良品の社外流出事例について、定期的に振り返る時間を設けています。該当する職場はその時決めた防止策がきちんとこなせているか確認するようにします。
生産性(コスト、納期)
最後に生産性の問題です。こちらは会社としての利益に関わる問題です。いくら高品質の製品を作っても、求められている数量、納期に間に合わなければ意味がありません。
安全、品質を確保した中で、いかに高効率で生産できるかが問われます。具体的には何をするべきか。現場作業員の立場からすれば「停止要因の分析・改善」となります。
作業機械の速さを変更することは出来ません。ではその機械が作業停止している時間をいかに短くするかが現場作業員が意識するべきことになります。
「大数の法則」という考え方があります。少数では何の法則も見出せないことでも、大数で見ると一定の法則があることをいいます。
製造業で大数の法則を活用するにはどうすればいいのか。それはとにかく記録をとることです。その日の製造品、製造時間、製品替えの時間、機械停止など記録を取ります。その記録が積み重なれば、何に時間がかかっているのか分析することが出来ます。
例えば、製品替えに時間がかかっていたとします。その要因の一つに、使用する部品を取りに行くことがあげられました。ならば、部品を取りに行く時間を短くするにはどうすればいいのか。工場内のレイアウトを変えてみればいい。
このような形で現場作業を改善する必要があります。
私の会社では自分が担当している作業について、振り返るようにします。作業の様子も別の職場の人が視察に来ることもあります。何に時間がかかっているのか、作業時間短縮の為、どこを変更できるか意見交換を行います。
労働災害(不良品流出)の発生要因4選
では今回の本題に入ります。私は通算何度目かになるかの労働災害を発生させてしまいました。労働災害が発生する要因には次の4つが関わっていると考えます。
作業員が変わる
ある作業員が、普段とは違う作業を行うときに発生しやすくなります。それは、その作業に慣れていないことが原因として挙げられます
他、複数人で機械作業を行っている時、誰かが作業を交代した時に発生しやすくなります。交代者に対して、作業内容の引継ぎが足りていないことが原因として挙げられます。
結局のところ、コミュニケーション不足にまとめることも出来るかもしれません。
慣れない作業を行っている人物、交代で入った人物に対して、安全のために「これだけはやってはいけない」、「ここまでは行った、次はこの作業から始める」など指導・引継ぎをする。
自分では指導・引継ぎをしたつもりでも、相手側は理解が不足しているかもしれない。きちんと念を押して、全部理解しているのか把握しなければなりません。
機械が変わる
これは使用している設備が変わったときに発生しやすくなります。その機械に対する慣れ・熟練度の問題になります。
実際に行う作業・作業結果は同じでも、使用する機械によって勝手が違うことはあるものです。同じような感覚で機械を使用した為に、思わぬ災害が発生してしまいます。
たとえ同じ作業・作業結果となるとしても、機械ごとにマニュアルを用意するべきだと考えています。簡易的な物でもかまいません。
作業者も普段と異なる機械を使う以上、慎重になるべきです。会社として行っている安全活動を思い出し、作業前に安全確保から始めます。
これは一つの現場改善にもつながると思います。例えばある機械にはこの安全装置がついていても、この機械にはついていない。ならば、不安全ヶ所として改善する。すなわち、安全装置を追加するといった措置を行えばいい。
作業方法が変わる
定常作業、非定常作業という位置づけがあります。
定常作業とは、定期点検のように繰り返し行われる作業のことをさします。少々広義の意味合いから外れるかもしれませんが、普段の製造作業についても定常作業に分類できると考えています。
それに対し非定常作業とは、保守作業・トラブル対処など通常の作業とは異なる作業のことをさします。労働災害が発生しやすいのは、この非定常作業が大半です。
通常の業務に照らし合わせるならば、普段通り行っている作業があるとします(定常作業)。しかし生産性向上のために他にやり方があるのではないか、ある一部分だけ作業方法を変えてみよう(非定常作業へ)。この時こそ、労災・不良品が発生しやすい瞬間です。
それは普段と作業方法が異なる慣れないやり方をしています。繰り返しになりますが、作業前にどこかに不安全ヶ所がないかチェックし(KY活動)、安全を確保したうえで作業を行う必要があります。
その作業方法が馴染んでくれば、非定常作業から定常作業へ変化していくことでしょう。
素材が変わる
同じ機械、同じ作業方法を行っていたとしても、扱う製品の素材が変われば同じやり方は通用しないことがあります。
金属板などの場合、素材によって強度が異なります。加工した際のバリの発生具合、完成後の製品品質も異なります。
完成後は同じ製品でも、その素材に合わせた安全確保、機械設定、作業方法が必要です。
労災防止のためには、複数人での事前テストが必要と考えています。素材の変更直後は、複数人が視察している中サンプル品を製造し、事前テストを行います。
単に製品そのもののチェックだけでなく、作業工程に不備がないか確認します。そのうえで誰もが作業できるように最低限の安全マニュアル、製品マニュアルを作成します。他にこうした方がよいとするものがあれば、日々の改善活動で追加すればいいだけです。
私の労働災害発生要因
今回私が労災を起こした要因は、「作業方法が変わる」に該当します。
一つの作業を行っている中で、こうした方が効率よく作業が行えるかなと考えました(定常作業から非定常作業へ)。普段と異なる慣れない作業を行った結果がこのケガです。
結果的には変更した作業方法の方が生産性向上につながりました。唯一、安全意識が欠けていたことが発生要因として挙げられます。
普段と異なる作業をするときは、常に安全確保を第一に考え実行しなければいけません。安全を忘れて作業をしたとき、痛い思いをするのは自分です。
自分の身を守る、同僚の身を守る、工場全体の身を守るために、一人一人何が出来るか常に頭に置くようにしましょう。安全第一。安全なくして品質確保、生産性向上は望めません。
これが製造業に携わる方の一助となればと思います。